先日、相続税に関するセミナーを開催いたしました。
その中で、令和5年の被相続人(お亡くなりになった方)の数が約157万人に達したことをお話ししました。そのうち相続税の課税対象となったのは約15.5万人。割合にすると9.9%、つまり約1割の方が相続税の申告が必要という状況です。この数字自体も、多くの方が関心を持たれる重要なテーマです。
しかし、セミナーを終えて私が改めて深く考えさせられたのは、死亡数とは逆の「出生数」から見る、これからの日本の姿でした。
10年で3割縮小した「新生児市場」の衝撃
この数字だけを聞くとピンとこないかもしれませんが、10年前の平成25年の出生数は103万人でした。わずか10年で、出生数が約30万人も減少しているのです。
これを経済的な視点で捉え直すと、「新生児を対象とした市場が、ここ10年で3割も縮小した」という衝撃的な事実を意味します。
この市場縮小の影響は、新生児だけにとどまりません。子供たちが成長するにつれて、乳幼児、児童、学生を対象とした市場へと、縮小の波はそのままスライドしていきます。
産婦人科、保育所・幼稚園はもちろん、学習塾、専門学校、短期大学など教育関連のビジネスにおいても、市場パイそのものが物理的に小さくなっていく未来は避けられません。
「攻め」よりも難しい「守り」の経営
こうした時代において、経営者が直面する大きな課題の一つが「上手なダウンサイジング(規模縮小)」です。
拡大路線は勢いで進めることができても、撤退戦には多大なエネルギーが必要です。雇用調整、設備の処分、そして何より撤退コストが資金繰りを直撃します。
市場が縮小していく中で、無理に現状維持を図れば、傷口を広げることになりかねません。だからこそ、経営的には「いかに上手に、計画的にダウンサイズできるか」が生き残りのカギとなります。
感情ではなく「データ」で未来を見る
私たちの事務所では、単なる税務申告だけでなく、経営計画を策定し、予算と実績を管理する「予実管理」を通じて日々の業績改善をご支援しています。
これまでの経営計画は「どう伸ばすか」が主眼でしたが、これからは「市場動向(人口推移)を踏まえた中期計画」の策定が必須です。
「なんとなく人が減っている」という感覚値ではなく、具体的なデータに基づいて自社の商圏を見つめ直す必要があります。その際におすすめしているのが、経済産業省が提供しているシステムです。
これは誰でも無料で利用できるシステムで、地域ごとの人口推移や産業構造の変化など、驚くほど詳細なデータを入手することができます。
ここを抑えているかどうかで、打つべき手はまったく変わってきます。
人口減少は避けられない事実ですが、準備ができている企業にとっては、筋肉質な経営体質へ生まれ変わるチャンスでもあります。
「攻め」と「守り」の両輪で、
これからの時代を生き抜くための計画を、
ぜひ一緒に考えていきましょう。
